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胚移植の方法について

胚移植の方法について

胚移植は妊娠結果にとても大切な手技です。 移植方法が胚にとって良くない方法であったり移植位置が不適切であったりすれば、せっかく患者さんやスタッフ、特に胚培養士の努力で良好胚盤胞ができていても、すべての努力が無駄になってしまう可能性があります。可能な限り慎重に、確実に、患者様に合わせて最良と思われる移植を実行しなければなりません。 当院ではすべての胚移植を経腹超音波ガイド下で行っています。自然妊娠では受精卵が卵管に運ばれて子宮内腔に入り、子宮内腔の上部に着床します。胚移植ではその位置に超音波で確認しながら静かに受精卵を置いてくるのです。 統計的には自然妊娠よりARTでの妊娠は前置胎盤がやや多くなっています。前置胎盤又は癒着胎盤になる率が自然妊娠よりやや高いです。胎盤の位置異常は移植の位置と関係があり、妊娠後の胎嚢の位置の約80%は移植位置と同じ位置であるとの研究報告があります。したがって移植位置は子宮底部に近い子宮内腔の上方に移植する必要があると考えます。 実際には、医師が膣や子宮膣部を生理食塩水で洗浄し、次いで柔らかいカテーテルが入りやすい子宮か確認し、移植カテーテルを決定します。胚培養士が移植する胚盤胞を、シリコン製の柔らかいカテーテルに吸引し、医師が超音波の画像を見ながらゆっくりカテーテルを進め、そっと胚を最適な位置に置いてきます。ただし頸管が狭かったり極端に曲がったりしている人は、まず曲がった細い外筒を挿入しておき、細くて柔らかい内筒に胚盤胞を吸引し、外筒内を通過させて同様に移植します。曲りが強度の場合マルチンという器具を使い、子宮膣部をつかんで曲りを緩くし外筒を挿入します。 経腹超音波は膀胱を通過して子宮の画像を得るので尿がたまっていると鮮明な画像が得られ、移植がスムーズにできます。特に後屈と言って子宮が後ろに傾いている人は、尿が溜まっていないと子宮が映らず、仕切り直ししたり、稀に経腟超音波ガイド下で移植したりします。 移植位置と同様にもう一つ大切なことは、出血をさせないで移植する、特に内膜に出血させないことです。なぜなら赤血球が壊れると大量のカリウムイオンが出るので、これは胚盤胞にとって毒となるためです。固い移植カテーテルを使用したり、移植を乱暴にしたりすると出血し易いです。当院では移植前に子宮鏡の検査をよく行いますが、前もって頸管の曲がりを確認しておくのと、子宮鏡のカメラを通過させておいて移植を出血させずにスムーズに行う意味もあります。