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着床前診断:PGT-A(着床前染色体異数性検査)について

院長記事

2021年9月23日に、日本産婦人科学会が日本で行なってきた着床前診断のデータ発表がありました。PGT-Aの対象が反復流産(習慣流産)と反復ART不成功症例でした。妊娠率が約60%、流産率が約10%でした。胚盤胞になっても戻せる胚は約40%でした。結論として、PGT-Aを行うと妊娠率はやや良なるが大きくは改善せず、流産率は低くなった、ということでした。これは海外からの報告の出産率50%~60%と同等でした。
2012年頃まではアメリカのリプロジェネティックス社によるアレイCGHによるPGT-Aの結果報告が毎年ありました。それによると不妊患者の37歳以下では約50%の胚盤胞の染色体が正常、38歳以上で約33%が正常、41歳以上で約20%が正常、43歳以上で約11%が正常でした。すなわち体外受精をして良好胚盤胞が得られた場合、およそですが37歳以下であれば2個に1個、38歳以上で3個に1個、41歳以上で5個に1個、43歳以上で8個に1個が移植できる胚盤胞となります。したがってPGT-Aを行わないと、41歳以上の高齢では、良好胚盤胞を移植しても妊娠する確率が低く、妊娠しても流産になる確率がより高くなります。流産後あらたに採卵すると、最低2周期は空けて採卵をするので、かなりの時間的なロスが起こってしまいます。NIPT(出生前診断)を受けて妊娠継続をあきらめた場合、さらなる時間のロスが生じるのと、患者さんの精神的負担も非常に大きくなります。以上のことから患者さんの年齢が37歳以下ではPGT-Aを行うメリットはあまり認められないが、41歳以上ではPGT-Aを行うことが大きな利益をもたらす可能性はあると考えます。
現在、PGT-Aを行っても出産率は50%程度と高くありません。その原因の一つは、PGT-Aが胚盤胞の胎盤になる細胞を5個から10個採り出して行う侵襲性検査であるからである可能性があります。精度の高い非侵襲性検査が実用化されれば、出産率が大幅に改善する可能性があります。