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マイルド刺激IVF周期で出生率と累積出生率を最適化するには

論文紹介

“Oocyte or embryo number needed to optimize live birth and cumulative live birth rates in mild stimulation IVF cycles” Reprod Biomed Online, 2021

「マイルド刺激IVF周期で出生率と累積出生率を最適化するために必要な卵子または胚の数」

【要旨】
・研究の質問
正常な卵巣予備能を持つ女性の、マイルド刺激IVF(MS-IVF)後の周期あたりの出生率(LBR)と累積LBR(CLBR)を最適化するには、いくつの卵子または胚が必要か?
・研究デザイン
イギリスの5つの不妊治療センターの4年間のデータベースの後方視的研究。対象は、正常/高卵巣予備能の女性を含み、自己卵によるMS-IVF(毎日150IU以下のリコンビナントFSH投与)と、新鮮胚移植および余剰胚の凍結胚移植(FET)を行った。各患者の最初の周期のみを含めた。ゴナドトロピンの1日平均が150IUを超える周期は除外された。全胚凍結(FAE)周期は別に分析した。
・結果
合計862周期が選択基準を満たした。592周期は新鮮胚移植、239周期は(過剰反応などのため)全胚凍結となった。新鮮胚移植を受けた女性の年齢の中央値は35歳、胞状卵胞数の中央値は19個、抗ミューラー管ホルモンは19.2pmol / l(≒2.68ng/ml)だった。35、35〜37、38〜39、40〜42歳未満の年齢層の新鮮胚移植でのLBR および全移植周期を含むCLBRは、それぞれ37.8%と45.1%、36.0%と41.6%、18.4%と29.1%、および8.9%と18.1%だった。新鮮胚移植後のLBRは、9個の卵子(40.3%)または4個の胚(40.8%)の後で横ばいとなった。新鮮胚移植とその後の余剰胚の凍結胚移植を含むCLBRは、12個の卵子(42.9%)または9個の胚(53.8%)が得られたときに最適化された。卵子あたりのLBRは、35歳未満の女性で採卵数5個未満の場合にピークであった(11.4%)。その後、年齢が上がるほど、採卵数が増えるほど減少した。重度の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の症例はなかった。

【解説】
この報告では、毎日150単位のrFSHというマイルドな刺激をした場合に、主に新鮮胚移植(とそれに続く凍結胚移植)を行った場合の妊娠成績を「採卵数別に」「できた胚および移植可能な胚の数別に」比較しています。それによると、新鮮胚移植での妊娠率を最も最適化するのは9個の卵子または4個の胚、凍結胚移植まで含めると12個の卵子、または9個の胚の場合であると結論しています。全胚凍結になった場合については、採卵数も胚の数も多いほど妊娠率は上がっています。
新鮮胚移植は当然、採卵数が少ないほどホルモンが上がりすぎず移植には適しているので、この結果は、着床の条件への影響も含めて検討しなければいけません。
あくまでも、新鮮胚移植を行った条件下では、卵子1つ当たりの妊娠率は、採卵数2個の場合がピークで「少ないほど高い」という結果であったとのことです。平均年齢35歳で、正常以上の卵巣反応の患者さんを対象にしているので、それほど多くの卵子は必要ないということは言えます。しかしこの研究では40代で採卵数5個未満では、誰も妊娠していません。
大事なのは「卵子当たり」ではなく「周期あたり」の妊娠率です。周期当たりの妊娠率を最大化するという視点のほうが大事だと思います。

当院では、副作用を出さないため10~15個の卵子を採卵することを目指して刺激を行い、移植可能なホルモン値や卵巣反応であれば新鮮胚移植を行う、という姿勢で治療しています。