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クローン羊のドリーはどうして生まれるか

基礎医学

核移植技術によるクローン細胞の作製

クロ-ン細胞は、分化した体細胞の核を未受精卵の核を除去し、入れ替える核移植によって作ります。受精に似た刺激を与え、受精卵と同じ状態にすると、分化していた核のゲノムは初期化され体のどの臓器の細胞にもなれます。細胞が分化し発達してクローン動物が生まれますが、生まれる率は1~2%ととても低くほとんどが異常を持っています。その理由は核移植したゲノムの初期化が不十分だからです(DNAの脱メチル化が不十分で修飾が残存)。分化の印がまだゲノムに残っているのです。IPS細胞(人工多能性幹細胞)でも初期化が完全ではないということです。クローン羊のドリーは、ゲノムの初期化が運良く十分に行われたために生まれてきたのです。

一方、インプリンティング遺伝子については生殖細胞(精子や卵子)を作る過程でしか初期化されないため、そのまま維持されます。下図で赤と青で色付けされた部分がインプリンティング(父母由来の目印)遺伝子です。インプリンティング遺伝子は初期化されず正常に働いているので、クローンマウスや牛や羊は生まれるのです。

クローン動物の子供は、生殖細胞がつくられて受精する過程で、分化の目印も父母由来の目印も完全に初期化されて書き込み直しが行われます。これは通常の発生と同じであり、初期化に関する問題もほとんど起こらないため、クローン動物の子供はほとんどが正常で生まれてきます。

kuron